本書の著者である濱谷 晃一さんは、テレビ東京のドラマ制作部プロデューサーです。
主な作品は、
- 好好!キョンシーガール
- 俺のダンディズム
- ワーキングデッド
- 太鼓持ちの達人
テレビ東京は他局に比べると「予算がない」ことで有名です。
それを補うためにテレ東は、企画のおもしろさで他局と戦っています。
ですから、テレ東ではとんでもない数の企画が考えられているはずです。
そのような現場で著者は企画を実現しヒットさせています。
本書では、「企画第一主義」であろう会社で、ヒットする企画を生みだす発想術が紹介されています。
そんな著者も最初は「お金なし」「才能なし」「コネなし」という状態からスタートしました。
そこから自分なりの発想術を考え出して、企画がヒットするようになったようです。
ですから、予算がない、そもそもアイデア力がない、という人にこそ最適な内容です。
この発想術は、制約が多ければ多いほど効果があり、才能がなくてもアイデアを強制的に出させるようになるためのものです。
今回の記事では、企画の元となるアイデアを見つける方法や、そのアイデアをさらにおもしろくするいくつかのメソッドをピックアップします。
企画の種をみつける7つの方法
企画を考えることが必要になってから、「さあ企画を考えよう」では弊害があるようです。
思い浮かんだことはすぐスマホにメモする、ということも習慣にしています。大事なのは普段からしておくこと。提出期限ギリギリになってから考えると、どうしてもそのジャンルに直接結びつくアイデアをみつけだせなくなり、過去のヒット作の二番煎じや、他の人たちと似たような企画になってしまいます。
1.街の変人を観察する(物、人、会話を観察する)
街で見かけたおもしろい人、街で耳にしたおもしろい会話などは思わぬ企画の宝庫になる。
できれば、自分とは縁遠い人を観察する。
2.尊敬リストをつくる(異業種のスゴイを集める)
自分が感銘をうけたものを集める。
3.嫉妬リストをつくる(同業種のスゴイを集める)
自分が嫉妬したものを集める。
4.アイデアのソムリエをみつける
自分の好みと合う、おもしろいアイデアをおしえてくれる人をみつける。
5.アイデアの百貨店を近所にみつける
TSUTAYAやスマホのアプリショップが、著者にとっては短時間にアイデアをみつけることができる場所のようです。
6.畑違いのランキングを置き換える
他ジャンルのヒットしているものを、自分の分野に置き換える。
7.アイデアには「いいね」を押しまくる
あまりいいアイデアではないような企画でも、「これはいい企画だ」とポジティブにとらえる。それがアイデアが豊富な人とそうでない人との違いになる。
無理やり、かけ合わせ発想術
個々のアイデアが大してよいアイデアではないときは、アイデアとアイデアをかけ合わせるとよいようです。
アイデアとアイデアをかけ合わせることは、他の「アイデア・企画」本でもよくいわれていることです。
しかし本書の場合は、もう少し踏みこんでアイデアをかけ合わせます。
まったく関連のないアイデアとアイデアをかけ合わせるのです。
著者が制作した番組に「太鼓持ちの達人」という番組があります。
この番組は「処世術」と「戦争ゲーム」のかけ合わせだそうです。
「正しいブスのほめ方」という「面倒くさい人を絶妙にほめるという本」に、戦争ゲームをかけあわせたら、よりむずかしい敵を攻略するという新しい企画になったようです。
これなら企画が成功するかはともかく、簡単にだれも思いつかないような企画を生み出すことができるのではないでしょうか。
簡単に「かけ合わせ」で企画を生みだすときは、アイデアAを固定したほうがよいようです。
AもBもゼロから考えると、アイデアの選択肢が無限に広がりすぎてしまうといいます。
「A」というアイデアを決めておいて、本屋に行ったり、ネットサーフィンなどをすると、思わぬ企画を思いつくそうです。
ヒットを分析する「自分メガネ」をかける
「よい企画ができた」としても、それを一人で考えたときは、「ひとりよがり」で単なる自己満足的な企画になっている場合があります。
それを防ぐためにまずは、企画の相手となるお客さんを具体的にイメージします。
たとえば、狙っているお客さんの層が「週刊SPA」「anan」「東京スポーツ」を好きだとしたら、大衆の本能に訴える内容が好まれるはず、とみることができます。
そこで、いろいろなものに対して「SPA」ならどういう特集を組むだろうと考えるのです。
こうすることによって、より客観的に企画もみれるし、新たアイデアをみつけることにもつながるようです。
最後に
テレビ局で働く人が書いた企画本は数多くあり、わたしは結構目をとおしてきました。
そのなかでも本書は、ヒットする企画を発想するメソッドが、生々しいと感じるくらい詳細に記されています。
ここまで赤裸々だと、この本を読んでヒットする企画を生み出せないのは、本の内容ではなく、それを応用できない読者が悪いんだろうな、と感じるくらいの内容です。
また、本書に生々しさを感じたのは、著者が「大衆の欲望を刺激する」という「SPAフィルター」をかけて生まれた内容だからでしょう。
内容もさることながら本の帯にあるように、企画ひとつで「アイデア一発・成り上がり」たいのなら読んで損はない内容です。
コメント