「名医が教える不眠症に打ち克つ本」は、不眠の原因や対策がわかりやすく解説されています。
快眠に必要なリラックスするための心理療法などを、イラストつきで紹介しているので非常に実践しやすいのです。
本書の魅力は、数々の不眠対策を紹介しつつも、そのすべてを実践する必要はなく、「自分が心地よいと感じるものだけ実践すればいいです」と論じている点です。
むずかしいと感じたり、とても毎日できないようなことをしようとして挫折すること自体が、不眠をより深刻なものにする可能性があります。
「眠るために」とか「効果があると人が言うから」ということでその方法に挑戦し、つらいと感じたのにガマンして続けるのはマイナスです。何か苦しいことを克服したら眠れるようになると考えるのはよくありません。
睡眠不足はデブになる
著者の内山 真氏は、日本大学医学部精神医学系の教授です。
うつや睡眠障害の研究をされていて、科学的に証明されている睡眠に関する新しい情報を、本書では多数紹介されています。
その中でわたしが興味をひいた情報は、不眠と肥満には関連があることです。
睡眠不足がつづくと「レプチン」というホルモンの分泌が低下します。
レプチンは満腹中枢に作用して「満腹感」を感じさせます。
レプチンが分泌されないことにより、なかなか満腹感を感じないため食べ過ぎてしまいます。
おまけに睡眠不足は、「グレリン」という食欲増進ホルモンを増やして、「もっともっと食べたい」というおそろしい指令をだします。
ようするに睡眠不足がデブに拍車をかけるのです。
もちろん、睡眠不足はデブになるだけではありません。
注意力の低下、免疫力の低下、今かかっている病気の悪化など、心身にさまざまな悪影響を及ぼします。
とはいっても、睡眠不足をなおすために市販薬の「睡眠改善薬 ドリエル」などを飲むことは間違いだそうです。
ドリエルは不眠の症状を一時的に緩和するためだけの薬であり、治療薬ではないようです。
眠るために大切なリラックスタイム
快眠するには心身のリラックスが必要です。
しかし、ストレスが重なると頭が冴えてしまい、なかなか眠りにつくことができません。
リラックスするには、いつも自然と眠りにつく1~2時間前に、入眠儀式のようなことする「リラックスタイム」を設けるようにしたほうがよいようです。
本書で紹介されているリラックス法をいくつか紹介します。
- 筋弛緩法
- 自律訓練法
- 呼吸法
いずれもリラックス効果がある方法ですが、やはり「呼吸法」が一番やりやすく、持続できて習慣化することができそうだと感じました。
呼吸法をすると、「ボ~」として意識が飛ぶような感じで、「眠るスイッチ」が入りやすいです。
とはいえ、すべてのリラックス法がイラストつきで紹介されているので、「やり方がわからない」となることはありませんでした。
他の類書は、文章だけで「やり方」を説明していて、実践がむずかしいと感じていたので、余計にわかりやすく感じました。
薬をつかわずに不眠症を治す
自分は「睡眠がたりていないのでは」と感じつつも、日中に眠気を感じずに過ごせるようであれば、それは満足すべきもののようです。
しかし、日中に強い眠気を感じて、仕事などに支障をきたすようであれば医師に相談すべきです。
軽症であれば睡眠薬を使わずに不眠を改善していく方法を選択してもよいようです。
薬を使わずに不眠を改善する方法は、認知行動療法による対処です。
対処法がいくつかあるのでピックアップします。
●刺激制御療法(5つのルール)
- 眠くなってから寝床につく
- 眠る以外の目的で寝床の上で過ごさない
- 10分以上も入眠できない場合は寝床から離れる
- 毎日同じ時刻に起きる
- 日中は眠くなっても15時以降は昼寝をしない
●光療法と生活の工夫
人間は朝の光りを浴びてから、「14時間から16時間後」くらいから眠気を感じるのだそうです。
ですから、おきたらすぐに朝の光りを浴びたほうがよいですね。
強い光り(日光)であれば15秒ほどでよいようです。
最後に
著者によると、人間は暗闇になると太古の記憶から不安を感じるものだそうです。
ですから、電気を消して寝室が暗闇になり、いい知れぬ不安感から眠りにつけないことがおきても、それは「当たり前」のことだともいえます。
完璧に理想的な状態で眠りにつき、8時間後にスッキリ目覚めるべきである、と考えることは不眠症の一因になるのでしょう。
本書では、不眠の原因と対策が、わかりやすい文章とイラストで紹介されています。
「不眠とは?なぜ不眠になるの?どうしたら治るの?」が理解でき、不眠という自分自身にとって深刻な問題に、いくらか対処できるようになると感じました。
わたしの場合は、まだ病院は行かずに自分で出来るだけ不眠に対処してみようと判断しました。
病院に行く前に読んでみたほうがよい一冊です。
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